イタリア料理を好きになればなるほど、ある疑問にぶつかります。
カルボナーラとグリーチャって何が違うの?
カチョ・エ・ペペとはどんな関係?
名前は知っていても、違いを説明するのは意外と難しいものです。
そんなとき、ローマの友人が教えてくれた覚え方があります。
それが、
「ローマのパスタは数式で覚えられる」
というもの。
最初に聞いたときは冗談かと思いました。
でも、一度知ってしまうと、これほど分かりやすい説明はありません。
まずは、答えから。
まるで数学のようですが、実はローマのデンパスタの関係を驚くほど正確に表しています。
すべてはカチョ・エ・ぺーぺから始まる
まずはローマを代表するパスタのひとつ、カチョ・エ・ペペ(cacio e pepe)。
名前をそのまま訳せば、
「チーズと胡椒」です。
使うのはペコリーノ・ロマーノと黒胡椒。
材料はたったそれだけ。
驚くほどシンプルですが、この潔さこそローマ料理らしさ。
余計なものは入れず、素材の力で勝負します。
そんなローマの食文化がよく表れた一皿です。
グアンチャーレを足すとグリーチャ(pasta alla gricia)になる
そこへ加わるのがグアンチャーレ。
豚ほほ肉を塩漬けにして熟成させたもので、ローマ料理には欠かせない食材です。
カリッと炒めたグアンチャーレの脂が加わることで、パスタは一気に力強い味わいになります。
すると料理の名前も変わります。
カチョ・エ・ペペ + グアンチャーレ = グリーチャ
ローマでは当たり前の話ですが、日本ではまだそれほど知られていないかもしれません。
けれど実際に食べ比べると、その関係がよく分かります。
グリーチャは、カチョ・エ・ペペの兄貴分のような存在なんです。
さらに卵を加えるとカルボナーラ
そして最後の一歩。
ここに卵が加わります。
すると生まれるのがカルボナーラ。
つまり、
グリーチャ + 卵 = カルボナーラ
というわけです。
ローマでカルボナーラを食べると、日本でよく見かけるクリームたっぷりのものとは少し違うことに気づきます。
本来のカルボナーラは、生クリームではなく卵とチーズが主役。
卵のコクとペコリーノの塩気、そしてグアンチャーレのうま味で作られています。
こう考えると、カルボナーラは突然現れた料理ではありません。
カチョ・エ・ペペから始まり、グリーチャを経て生まれた、ローマの伝統パスタの集大成のような存在なのです。

ローマ人は引き算も好き
面白いのがアマトリチャーナとの関係です。
日本でも人気の高いトマトソースのパスタですが、実はグアンチャーレとペコリーノを使う点ではグリーチャとよく似ています。
実はこれもグアンチャーレとペコリーノを使う仲間の料理です。
ローマでは、
「グリーチャはアマトリチャーナからトマトを引いた料理」
と言われることがあります。
つまり、
アマトリチャーナ − トマト = グリーチャ
料理なのに足し算や引き算で説明できるなんて、なんだか楽しいですね。

ローマ料理らしい発想
こうして並べてみると、
カチョ・エ・ペペ
↓
グリーチャ
↓
カルボナーラ
という流れが見えてきます。
どれもまったく別の料理に見えますが、実際には同じ家系の親戚のような存在。
材料をひとつ足したり、ひとつ引いたり。
ローマ料理には、そんな合理的な面白さがあります。
レシピより先に生活がある
イタリアで暮らしていると感じるのですが、イタリア人は料理を難しく考えません。
「今日は卵があるからカルボナーラ。」
「トマトがなければグリーチャ。」
そんなふうに、その日にある食材で自然に料理が変わっていきます。
レシピが先にあるのではなく、まず生活がある。
そして、その積み重ねの中から郷土料理が生まれてきたのだと思います。
ローマのパスタを“数式”で説明する話も、そんなイタリアらしい合理性と生活感が感じられて、私は好きです。
次にカルボナーラを見つけたら
次にレストランでカルボナーラを見かけたら、少し思い出してみてください。
その一皿の後ろには、
カチョ・エ・ペペ
↓
グリーチャ
↓
カルボナーラ
という、ローマ人たちが何世代にもわたって作り上げてきた物語が隠れているのです。そう思うと、いつものカルボナーラが少し違って見えてくるかもしれません。

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