湖の中から鐘楼が顔を出すレージア湖

ぐるっとイタリアの旅
Photo by Mika Okumoto

アルト・アディジェ州のレージア湖(Lago di Resia)には、

少し変わった風景があります。

湖の真ん中から、教会の鐘楼が姿を見せているのです。

初めて写真を見たとき、

合成写真かアート作品かと思いました。

でも実際に訪れてみると、

本当に湖の中に鐘楼が立っていました。

遠くからでもよく見えるその姿は、

思わず、目を奪われます。

絵本のような風景

湖面から顔を出しているのは、14世紀に建てられた教会の鐘楼です。

背景にはアルプスの山々。

湖面に映る鐘楼。

その風景は、まるで絵本の世界のようです。

冬になると湖が凍り、

タイミングが合えば鐘楼のすぐ近くまで歩いて行けることもあります。

あまりにも幻想的な景色なので、

最初はロマンチックな観光名所だと思ってしまいます。

しかし、この鐘楼には少し切ない歴史が隠されています。

レージア湖の底に沈んだ村

現在見えている鐘楼は、

かつてこの場所にあったクローン村(Curon)の教会のものです。

1950年、水力発電用のダム建設によって周辺一帯は水没し、村は湖の底に沈みました。

163軒の家が失われ、多くの住民が移転を余儀なくされたと言われています。

現在残されているのは、歴史的建造物として保存された鐘楼だけ。

そうした背景を知ると、この風景は美しいだけではなく、

どこか物悲しくも感じられます。

冬になると鐘の音が聞こえる?

この場所にはこんな言い伝えもあります。

冬の夜になると、湖の底から鐘の音が聞こえるというのです。

もちろん実際には、鐘は湖が造られる前に取り外されています。

それでも、この話を聞くと静かな湖の底に、

かつて人々が暮らしていた村の姿を思い描いてしまいます…。

イタリアにもある「失われた風景」

イタリアを旅していると、美しい景色に出会うことがたくさんあります。

けれど、その景色が必ずしも幸せな歴史の上に成り立っているとは限りません。

レージア湖の鐘楼もそのひとつです。

多くの観光客は写真を撮りに訪れます。

私も、何枚も写真を撮りましたが、

その一枚一枚の向こうには、かつてそこに村があり、

人々の暮らしがあったことも忘れたくありません。

アルプスの美しい湖に立つ一本の鐘楼。

それは、イタリアで最も不思議で、そして少し切ない風景のひとつでした。

アルト・アディジェらしい風景

レージア湖は、オーストリアとの国境にも近い場所にあります。

そのため、イタリアというよりもチロル地方らしい雰囲気が漂います。

周囲にはアルプスの山々が広がり、ドイツ語の地名も多く見られます。

華やかな観光地ではありませんが、

この鐘楼が立つ風景には、一度見たら忘れられない魅力があります。

アルト・アディジェを旅する機会があれば、ぜひ立ち寄ってみたい場所のひとつです。

レージア湖はアルト・アディジェ州最北部にあり、

ボルツァーノから車で約2時間です。

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