トスカーナの森の奥で見つけた、白い温泉“Bagni San Filippo”

ぐるっとイタリアの旅

トスカーナと聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。

糸杉が並ぶ丘陵風景。

ワイン畑。

中世の町並み。

あるいはフィレンツェの美しい街角?

でも実は、トスカーナには少し意外なものがあります。

それは「温泉」です。

しかも、日本人が想像する温泉とはまったく違う温泉。

Bagni San Filippoは、その代表的な場所でした。

森の中へ続く道

車を降りると、そこは小さな村。

「サン・フィリッポの湯」という意味を持つこの場所は、古くから湯治場として知られています。

有名観光地のような華やかさはありません。

駐車場から森へ向かう小道を歩いていくと、だんだんわずかな硫黄の香りが漂い始めます。

「本当にこの先に温泉があるんだろうか??」

そんな少し不安な気持ちで木々の間を進んでいくと、突然、目の前の景色が変わりました。

白い岩肌。

かすかな湯気。

そして流れ落ちる温泉の水。

まるで別世界です。

白い鯨

Bagni San Filippoでもっとも有名なのが、「Balena Bianca(白い鯨)」と呼ばれる巨大な石灰棚です。

温泉に含まれる石灰分が長い年月をかけて積み重なり、独特の形を作り上げました。

遠くから眺めると、確かに白い大きな鯨が森の中で眠っているようにも見えます。

初めてみたときは、

「ここ、本当にトスカーナ?」

と思ってしまいました。

ワイン畑やルネサンスの町並みとはまったく違う風景。

むしろどこか神秘的で、日本の秘湯にも通じるような雰囲気があります。

気になる湯加減は?

ここまで見ていると、「実際の温泉はどれくらいの温度なのだろう」と気になります。

厳選はおよそ48度。

もちろんそのままでは熱すぎますが、冷たい沢の水と混ざり合うことで、

川沿いに大小さまざまな天然の湯船が生まれます。

上流は熱め、下流はぬるめ。

自分にちょうど良い場所を探しながら浸かるのも楽しみの1つです。

私が訪れたのは夕方頃だったので、森の中がすでに肌寒く、

川の中に入ると少し冷たいかなと感じるようなぬるま湯でした。

かつて冬に訪れた人の話を聞くと、湯気の立つ温泉につかりながら

周囲の森に雪が残っていたそうです。

なんとも贅沢な光景です。

実際の湯はというと。

うっすらと白く濁った半透明で、石灰を含んだ水特有のやわらかい質感があります。

肌に触れると、さらりとした湯が気持ちいいです。

トスカーナ旅行で、少し寄り道するなら

Bagni San Filippoは、ピエンツァやモンタルチーノなどオルチャ渓谷を巡るルートからも

比較的立ち寄りやすい場所にあります。

トスカーナ旅行というと、美しい村やワイナリーが中心になりがちですが、

こうした温泉スポットを組み合わせるのもおススメです。(予約なし、無料ですし。)

ワインだけではない、もうひとつのトスカーナの魅力に出会えるかもしれません。

私自身、想像していた以上に印象に残った場所でした。

イタリアにも温泉文化がある

イタリアで暮らしていると、

「もう有名な場所はだいたい見たかな」

と思うことがあります。

それでも時々、地図では小さな点にしか見えないけど、

実際に訪れると忘れられない景色が待っている場所。

Bagni San Filippoは、さまにそんな場所でした。

イタリア人にとって温泉は特別な観光地というより、

もっと身近な存在のようです。

週末になると家族や友人と出かけ、

温泉に浸かりながら、

のんびり話をし、

帰りにどこかで食事をして過ごす。

そんな自然な時間の流れがあります。

Bagni San Filippo にも観光客だけでなく、

地元の人らしい人たちが次々とやって来ていました。

その光景を見て、この場所の本当の魅力は風景だけではなく、

「時間の使い方」

にあるのかもしれないと思いました。

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