現在、世界でもっとも傾いている建物は、アラブ首長国連邦アブダビにあるキャピタル・ゲート・ビル。それはギネス認定されていて、傾きは18度というのだからオドロキです。

このビルは意図的に傾いた状態で設計されていますが、自然に傾いてしまった例として、ドイツ北西部にある教会の尖塔(ズールフーゼンの斜塔)があり、キャピタル・ゲート・ビルの前にはギネス登録されていました。
とはいえ、世界でもっとも有名な斜塔といえばピサの斜塔。ですよね?ウィキペディアによれば、ピサの斜塔よりもズールフーゼンの斜塔はさらに1.22度と約6.7度傾いています。
塔の傾度をきいても、どんな感じ???著書「イタリア世界遺産の旅」(侃侃書肆房)で詳しく書いていますが、ピサの斜塔の傾きはというと5.5度。これは57メートルある塔が垂直な状態から4メートルも下に傾いています。

ところで、イタリアにはほかにも斜塔があります。それが、ギルランディーナの愛称で親しまれている“市民の塔”です。モデナにあるギルランディーナは高さ86メートルで町のシンボル的存在。鐘楼として建てられました。実はこの塔も傾いています。ピサの斜塔ほど「おお、傾いてる!!」という感じはしませんが、垂直な状態から下へ1メートル60センチ傾いています。気候や気温、地震などによって、一日にほんの数ミリとはいえ、傾きは変動するそうです。
ギルランディーナという愛称は、大理石でできた鐘楼の頂上を飾るバラスター(手すり)が美しい花輪(花輪)のようであることに由来しています。
ギルランディーナの中にある一室には、天井に奇妙なものがぶら下がっているのに気づきます。これは有名な“手桶”で、今日まで大事に保管されてきました。「手桶!?」「あれが、そんなに有名なの?」と思いませんか?

この手桶は1325年11月15日のザッポリーノの戦い(Zappolino)でボローニャ軍からモデナ軍が強奪したものだと考えられています。ボローニャの人々はもちろん手桶の返還を求めたものの、モデナの人々は耳を傾けることはありませんでした。こうして2つの町の間で長く、激しい戦いが起こりました。最終的に手桶はモデナに残り、ギルランディーナの塔において保管されています。


その後、この手桶はモデナ出身の詩人アレッサンドロ・タッソーニの作品「La secchia rapita(強奪された手桶)」によって、人々の記憶に永遠に残ることとなりました。
ギルランディーナは、塔のあるグランデ広場、大聖堂とともに世界遺産に登録されています。モデナを訪れた際にはぜひ上がってみて下さい。塔を上がると、茶色のレンガ屋根が目の前に広がり、モデナの町が一望できます。
コメント